日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

税務ニュースTaxation Business News

平成31年度税制改正大綱 ~資産課税~

2019/01/23

<個人事業者の事業承継税制の創設等>
 新たな個人事業者の事業承継税制(個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度)が、平成31年(2019年)1月1日から10年間の時限措置として創設されます。

 具体的には事業用の土地・建物・機械等について、適用対象部分の課税価格の100%に対応する相続税・贈与税額が納税猶予され、法人の事業承継税制に準じた事業継続要件の設定等により制度の適正性が確保されます。
 ただし、事業から貸付事業(アパート・駐車場等)が除かれるとともに、現行の特定事業用小規模宅地等特例との選択適用であることに留意する必要があります。
 なお、与党大綱が公表された平成30年12月14日に、日本医師会から「今回、国税の相続税等において一定の措置がとられたことにより、地域を支える全国約42,000の個人立病院・診療所の円滑な事業承継がなされるものと考えています。」とのプレスリリースが公表されています。開業医等が顧問先であれば、早めに情報発信すべき項目と思われます。

<特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格計算の特例の見直し>
 平成31年(2019年)4月1日以後の相続等により取得する財産に係る相続税から、相続前3年以内に事業の用に供された宅地を、原則として特定事業用小規模宅地等特例の対象外とする適正化が行われます。

 なお、現行の特定事業用小規模宅地等特例の問題点(事業継続要件がない、債務控除の濫用の可能性、事業を承継しない相続人の税額への波及)については、貸付事業用の小規模宅地等における同様の問題点とあわせて、今後、引き続き適正化が検討されます。

<教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し>
 教育資金の一括贈与非課税措置について、一定の受贈者には贈与者死亡時の残高が相続財産に加算されることになるとともに、受贈者の所得要件設定(1,000万円超は対象外)や使途の見直し等が行われる一方、30歳以上の就学継続には一定の配慮が行われ、適用期限が2年延長されます。

 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置についても、受贈者の所得要件設定(1,000万円超は対象外)が行われ、適用期限が2年延長されます。

<非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し>
 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(特例制度についても同様)について、一定のやむを得ない事情により認定承継会社等が資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合においても、その該当した日から6月以内にこれらの会社に該当しなくなったときは、納税猶予の取消事由に該当しないものとされることになりました。


<民法における成年年齢引下げを踏まえた税制上の措置>
 民法における成年年齢引下げを踏まえ、相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢が18歳未満(現行:20歳未満)に引き下げられます。

 また、次に掲げる制度における受贈者の年齢要件が18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げられます。
・相続時精算課税制度
・直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
・相続時精算課税適用者の特例
・非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(特例制度についても同様)
 なお、成年年齢の引下げは、平成34年(2022年)4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。

<民法(相続法)改正に伴う税制上の措置>
 平成30年(2018年)7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が公布され、相続に関する規律が見直しされたことに伴い、新たに設けられた「配偶者居住権」や「特別寄与料」に対する課税など、相続税等について所要の改正が行われます。

 「配偶者居住権」とは、配偶者が居住していた被相続人所有の建物について、遺産分割等により、終身又は一定期間、配偶者がその建物に居住することができる権利をいい、民法で新たな権利として創設されたことから、相続税法においても、その配偶者居住権等の評価方法が法定されます。
 「特別寄与料」とは、被相続人の療養看護等を行った親族(相続人等を除く)が、相続人に対して金銭(特別寄与料)の支払請求をすることができる制度が民法で創設されたことから、相続税法においても、その親族は特別寄与料を遺贈により取得したとみなして相続税の課税対象とするとともに、特別寄与料を支払う相続人の課税価格からその額を控除することになりました。
 なお、「配偶者居住権」に関する規定は平成32年(2020年)4月1日から適用され、「特別寄与料」に関する規定は平成31年(2019年)7月1日から適用されます。
 「配偶者居住権」・「特別寄与料」などに関する民法及び相続税法の見直しは、相続対策を依頼されているクライアントに対し、早急に情報発信が必要になります。

 アドバイザー/中島 孝一 税理士

PAGE TOP